ところ変われば出産も変わる!イギリス・ロンドンでの水中出産体験記

3か国、3児の育児を経験したママの水中出産体験記
@ イギリス・ロンドン

イギリスにはNHSという無料の国営医療サービスがあり、なんと移民や国籍のない私たちのような短期滞在者にも同様のサービスを提供しています。「かかりつけ医制度」に登録すれば、だれでも無料で医療が受けられるのです(但し質が伴わないことが国民的議論を呼んでおり、常にテレビでも政治でもテーマになっています)。

イギリスでの出産手続きは、かかりつけ医に登録→面談し希望する産院を伝える→かかりつけ医が該当産院にレターを送る→該当産院に承認されれば自宅にOKレターがやってくるという流れです。私は30週をとうに過ぎていたのでとにかく早急にと念押ししました。日本のように迅速に事が運ぶことはまずないのですから。。ちなみに、このNHS制度とは関係なく、セレブ御用達?プライベート病院で産むという選択肢もあります。そちらの方がうんと早く物事は進んだのでしょうが、色々と調べたところ、なんと出産するだけで200万円近くかかることが分かりました!ひえーー!ベッカムの奥さんも産んでるよ、なんて日系病院の医師にも勧められましたが、3人目だし、そんなにお金をかけて産むのもなあ。安産だと信じ、無料国営医療NHSでの恩恵にあずかることにしました。

NHSの惨状(待ち時間の長さ、スタッフの不足など)はニュースになるほどですが、出産に関しては日本で2度出産経験のある私にも興味深い経験が待っていました。最寄りの産科は「アクティブバース」の思想を体現したバースセンターという設備を持っていました。アクティブバースとは1981年にイギリス人女性が作った言葉で、妊婦本人が主体的に妊娠出産に向き合い、産み方も自ら選択する出産スタイルのこと。それが可能となるように、大きな病院の中には、医療介入を必要とするお産のためのドクターフロアと、助産師が全面的にお産を取り扱う自然分娩希望者のためのバースセンターの双方があります。バースセンターには、ベッドやベンチ以外にも、バランスボールやビーズクッション、水中出産用のプールもあり、お産の進み具合に合わせ楽な姿勢、お産を効果的に促進させるための姿勢を自由にとることができます。もし途中でリスクありと判断されれば(国統一の基準あり)、上階のドクターフロアに移れるのです。まるで、総合病院に助産院が組み込まれたようなスタイルでいいとこどりのように思えました。一人目で経験した「分娩台の上で仰向けになり、足を固定され、明るいライトのもとで出産する」というスタイルはこちらでは主流ではないのです。ちなみに、以前暮らしていたスペインでは無痛分娩が主流で、私もロンドンに来るまでは3人目こそ無痛で!と意気込んでいたのでした。ところが、気付けば私はバースセンターでの水中出産を希望し、事実お湯の中で我が子と対面しました。「こっちでは普通よ。3人目なのに今さら無痛?お湯の中でつるっと産んじゃえば?楽よ~」ってすっかり乗せられて(笑)でもこれは素晴らしい経験でした。

 

経過が順調な経産婦には特に勧められるそうですが、あの1人目の出産は何だったのかと思うほどに、リラックスして、時に俯瞰しながら、痛み(=赤ちゃんの動き)と正面から向き合った出産となりました。痛みの波の合間はおしゃべりしながら過ごし、お湯に入ってからは、あったかさの中でますますリラックス。最後のわずかな時間だけ、あのうねりくる大きな痛みの波に身を任せ、あっという間にその瞬間に。お湯に入ってからが早かったので担当の助産師さんがお茶しに行っていないという。。代打で来てくださったベテラン助産師さんと研修中の助産師さんも見守る中、照明を落とした暗い部屋で、この世に出てきた息子は、丸まったまま、青く光る水の中に浮かんでいて。それはまるで宇宙に浮かぶ小惑星のようで。神秘的でした。




 

「さあ抱き上げて」と言われ右肩に抱き上げると、一瞬空気を吸ってしゃっくりのような音を出したかと思うと、すーっと何事もなかったかのように眠ってしまって。思わず「この子生きてますよね?」って聞いてしまうほど。暗い部屋で羊水から同じような温度のお湯に出てくる水中出産は、赤ちゃんにとっての刺激(光・寒さ)がないので、こんな風に寝てしまう子が多いんだとか。ちなみに後産は陸上で(笑)これは寒さで痛みもきつく出産よりつらかった・・・

もう一つ、日本ではあまり知られていないけれどぜひお伝えしたい出会いは「ドゥーラ」と呼ばれる女性。ドゥーラとは、医療行為こそしないものの、産前産後の妊産婦に寄り添い、お産を含めた女性の心身をサポートしてくれるお仕事(アメリカ・カナダを中心に広がっている)です。ロンドンにも日本人ドゥーラがいることを知った私はコンタクトをとり、サポートを依頼しました。日本からの親族の手伝いが見込めなかった上、夫は超がつくほど出張の多い仕事、上二人の子どもたちはそれぞれ小学校と幼稚園。産気づいた時に、大人がもう一人必要だと思ったのです(病院は子どもたちが長くいれる場所がないとのことでした)。

結局、産気づいた当日夜は夫が子どもたちと家で待機、私はドゥーラのJさんとタクシーで産院に向かいました。正直、夫がついてくるより断然心強い訳です(笑)もちろん、夫ともその瞬間を共有できればベストでしたが、3人目、夜中の出産となれば仕方のないことです。ドゥーラのJさんはロンドンの産院を熟知しているので、病院とのやりとりはお任せできたし(病院側もドゥーラを歓迎します。自分たちがつきっきりでなくてもいいので)、赤ちゃんの動きを促進する姿勢を教えてくださり、とにかくずっと一緒にいてくれます。お産の経験値の高い人がそばにいてくれる、そして異国にあって、病院や主人とのやりとりをお任せできる安心感は、私から恐怖心を取り除いてくれ、リラックスしたお産へとつながったと確信しています(きっと日本の助産院でのお産もそういう安心感があるのだろうなと思います)。ちなみにドゥーラは産前には、出産やアクティブバースついての講義をしてくれ、産後は必要があれば沐浴・授乳指導にきてくれたり、場合によって上の子をみていてくれたり家事をサポートしてくれたりもします。日本でもドゥーラ協会があるようです。

一般社団法人ドゥーラ協会

キャサリン妃の退院を見てもわかるように、イギリスでは、特に問題ないお産だった場合、当日もしくは翌日退院が主流です。私も朝4時頃出産し、同日16時が退院予定でした!(ただ赤ちゃんの心音を小児科医にもチェックしてもらう必要があると言われ一泊し翌日退院となりました)ここで疑問が湧きますよね?どうやって当日翌日退院できるのか?と。ふらふらやろ、、と。理由は3つあるかなと思います。一つは、病院の居心地がよくないので家に帰りたくなるということ。次に自然分娩でのスムーズなお産になれば事実、体が楽だということ。もう一つ、早期退院を可能にしているのは、退院後、地域の助産師や保健士さんが自宅を何度も訪ねてくるシステムです。実は産前の検診もほとんどが「地域」で行われ、病院には直前の母親学級と各種検査で訪れるほかは、産むだけ。産後のケアは再び「地域」にゆだねられるのです。我が家にも退院翌日に助産師がやってきて、各種計測、血液検査、悪露や授乳トラブルの確認などがありました。経産婦なのであっさりしていましたが、初産だったらもっと時間をかけてくれたと思います。息子は黄疸が強く、体重減少も指摘されていたので3週間で5人の女性が自宅に来てくれました。

ロンドンでの出産は当初予想もしなかった水中出産になりましたが、イギリスの女性たちが、女性の選択肢が最大限確保される環境をつくるために長く活動し勝ち取ったアクティブバースという出産スタイルを体で知ることができ、また、実にプロフェッショナルな助産師さんの出産哲学や仕事ぶりも知ることができ、素晴らしい社会科見学となりました。何より過酷な引っ越しにも耐え、無事生まれてきてくれた息子に感謝しています。




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